恨みだけじゃ語れない事件の真相
俺の子供の時にギターだかベースが欲しくて欲しくて、おじいちゃんに、
「買って欲しい」
と頼んだら断られて、それでもしつこく頼んだら、中古の楽器屋の店頭に置かれた玩具のような安いギターもどきをみつけてきて、
「あれでいいんだお前は」
と言われて滅茶苦茶腹が立ち、今度は地元でヤバい目にあって、またおじいちゃんに、
「東京から脱出するから少し金を貸してほしい」と頼んだら、鼻で笑われてあっけなく断られた時も親族なのにブチ切れそうになったのを覚えている。
どうして腹立たしかったかというと、家は母子家庭でお袋や兄貴となんとかやってきて、お袋の父であるおじいちゃんは、お袋や兄貴にはなにかと良くしてくれていたので、俺も当然、と思っていたのだ。そういう状況で頼みを断られると、結構根に持ってしまうものだ。もしかしたら今回の容疑者も被害者にそういった甘えがあったのかも知れないね。
よくこの手のメッタ刺しや残酷な殺人事件が起こると、専門家みたいのはすぐに「怨恨」を理由にあげる。もしくは、神戸児童殺傷の酒鬼薔薇事件のような猟奇殺人による「興味本位の死体損壊」と決めつけるけど、そのふたつでは説明がつけられない特殊なケースもある。
神戸山口組の幹部がM-16機関銃で射殺された事件では、ヒットマンの朝比奈久徳容疑者(52)は幹部の顔面や全身を数十発撃ち抜いたけど、これは恨みだったり、猟奇的な感情なんかとはかけ離れている。
この殺し方には、
「見たか? これがヤクザのやり方だ」
とでも言わんばかりで、まるでマフィア映画だね。
他にも、少し前に女が新宿でホストを刺して殺人未遂で捕まった事件の公判があったみたいだけど、動機は「好きで好きでたまらなかった、他の女を見て欲しくなかった」だった。
それぞれの事件にはそれぞれの事情ってのがある。ひとつ言えることは、人から恨まれるようなことは気をつけないとね。例えそれが家族であっても。
M16はアサルトライフルとか突撃銃とか自動小銃という。機関銃は大まかにいうと置いたり設置したりして使う威力が高い連射可能な銃。