だがゴングが鳴ると、試合は予想外の激しい展開になった。ボクシングルール、グローブは12オンス。右ストレートをダッキングでかわす高垣に、啓之輔の左が追い打ちをかける。「勇二、行けるぞ!」観客からの声に、反撃の狼煙が上がりかけた時、アッパー気味の右がカウンターで入った。
「ワン、ツー、スリー、フォー!」
ファイティングポーズを取る高垣に、啓之輔はさらに獰猛に襲いかかる。鋭いコンビネーションで高垣を追いつめると、右ボディが脇腹をとらえ、マットに沈んだ身体が立ち上がることはなかった。
「情けねえっスよ、マジ」
1ラウンド2分6秒、ノックアウト。少年のように涙を流す高垣に、観客席からは力を尽くして戦い切った男たちへ拍手が湧き上がる。横浜のアウトサイダーの灯は消えていない。
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