【闇営業余波】マスコミの「反社に謝礼払わない」は本当?

騒動の発端となった宮迫(ツイッターより)

【闇営業余波】マスコミの
「反社に謝礼払わない」は本当?

「払わない」のは倫理観じゃなくてリスク回避のため

宮迫博之や田村亮ら吉本興業を中心とした多数の芸人が、詐欺グループや暴力団を相手に仕事をしていた「闇営業」問題で、一部から「マスコミが反社会的勢力からネタを買っていた疑い」が議論になった。

タレントのカンニング竹山がツイッターで「反社会的勢力から出版社がもしスキャンダル等々の写真やデータを買っていたとしたらまずそこが一番の問題だと思う。反社会的勢力と一緒になってビジネスをし繋がっている会社ということになる。もし買っていたとすれば誰から幾らでどんなルートで買ったのかを世間に説明する必要があるのでは?」と投稿。

また、幻冬舎の編集者・箕輪厚介氏もネット番組で「反社会勢力はアウトだという論理なら、そこから写真を買うなんて報道じゃない」と、闇営業を伝えた『FRIDAY』などの週刊誌が、反社からネタを買ったと断じたようなコメントをしていたとも伝えられた。その証拠を彼らが持っているのなら話は別だが、想像で言っているだけなら、マスコミの仕事を理解していないド素人の発想に見える。

理由は2つある。

ひとつは、新聞や週刊誌でアウトロー系の取材を約20年も続けてきた経験から言えば、「闇社会からネタを買うことほど危ない行為はない」という認識が多くのメディア側にあるということ。筆者が98年、ナイタイスポーツに入社したときも、最初の社員研修で強く教えられたのが「暴力団や犯罪者などを取材する場合は、会社や上司に必ず相談すること。勝手に謝礼などの約束を絶対にしない」というもので、それが明記された資料もあった。その後、フリーランスとして多数の週刊誌や夕刊紙などで幅広く仕事をしても、これは共通認識で、アウトロー系取材を得意とする媒体では、かなり慎重な姿勢で取材がされていた。

語られていないが、これはマスコミの倫理観によるものというよりリスク管理だ。

「闇社会」の人間が芸能人を利用したがるのと同様、マスコミもターゲットに狙われやすい。ひとつに広告としての利用価値があり、かつて暴力団組長らがプロレスやボクシングのリングサイド席に姿勢よく陣取って、テレビ中継に写り込んだのもそれが狙い。怖いのは、闇社会をネタ元に記事にすると、あらゆるトラブルに遭いやすいことだ。あとから記事にイチャモン付けて慰謝料を要求してくることだってあるし、ネタの信憑性も怪しい。

かつて芸能人のスクープを暴力団から得た芸能リポーターが新宿・歌舞伎町のイベント会場で、コワモテの連中に会場から連れ出されたことがあった。その場を見た筆者が、戻ってきたリポーターに話を聞くと、「おまえの記事の書き方のせいでタレントが使いモノにならなくなった」と因縁をつけられ500万円もの借用書を書かされたという。反社からのネタ買いほど怖いものはない。これは暴力団排除条例が全国的に広がる前からの話で、世間よりずっと先に緊張感を持ってきたものだ。

もっと言えば、出版不況のいま、情報に高額謝礼を出せる出版社はない。

かつて記者にタクシー代を湯水のように使わせていた週刊誌でも、女優のキス現場写真に3万円程度の謝礼しか出せず、その程度の金のために闇社会の人間が擦り寄ってくるわけがない。それこそネタをタレント本人に買い取らせた方がずっと高い値が付く。何億も詐欺で儲けた連中には何か別の意図があると見るのが自然だ。

取材活動の基礎を学んでいないアルバイトみたいなライターが不用意にネタを買ってしまうケースもあるだろうが、「マスコミが反社会的勢力からネタを買っていたか」なんて見方は、むしろ闇社会の本質から論点を背けるような話でお粗末。それより「反社会的勢力がマスコミにネタを差し出した真意はどこにあるか」の方が核心に迫るはずだ。

Leave a Reply

Your email address will not be published.