「トモヤぁ~、あれ、さっき、金もらったやろ?いくらもらったん?ナンボもらったん?」
「なに、まだ見てへんし、分からん」
「見てみぃ、なぁ、ナンボなん?」
「あっ!10万ある!」
ショーちゃんがすり寄ってきて肩を当ててきた。
「トモヤぁ~、それになにに使うの~?」
「わからん」
するとニヤッ~としながら、また合掌をした。
「なぁ、トモヤ貸してくれへん、なぁ」
…出た、いつも返さんやんか、この間のタバコ代もまだやんけ…と思いながら
「分かったわ、ほなこんだけな?」
と1万を差し出した。
「えっ?えっ?からの~?」
金欠の時のショウキはしつこく面倒くさい。トモヤは仕方なくもう1万渡した。
「ああ無理やで!もう一声頼むわぁ!」
と3本の指を出した。
「なにその3本? 返してな、ホンマに」
「今度な、大きな売買があって、絶対返せるさかい!」
「分かったわ。ホンマに返してや」
スロープを上がりながら、合計3万円をショーキに渡した。外に出ると歩道にほってあったゼッペケがない。辺りを見渡すと、181号線の車道の真ん中に転がっていた。
「マジか!」ゼッペケを取りにいったショーキがエンジンをかけようと何度もキックするがかからない。
「どないしたん?」
「なんや、ガス欠か、漏れたんか、エンジンがかからんわ」
「もうええわ、歩いて帰ろ、ほなまたね」
千北の交差点を渡ると東山方面の空が明るくなってきていた。
写真 福持英助 / デザイン 櫻井浩(⑥Design)
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