「あんぽら」 第1章 地下地下の賭け喧嘩 デビュー編 【第7話】

「トモヤぁ~、あれ、さっき、金もらったやろ?いくらもらったん?ナンボもらったん?」

「なに、まだ見てへんし、分からん」

「見てみぃ、なぁ、ナンボなん?」

「あっ!10万ある!」

ショーちゃんがすり寄ってきて肩を当ててきた。

「トモヤぁ~、それになにに使うの~?」

「わからん」

するとニヤッ~としながら、また合掌をした。

「なぁ、トモヤ貸してくれへん、なぁ」

…出た、いつも返さんやんか、この間のタバコ代もまだやんけ…と思いながら

「分かったわ、ほなこんだけな?」

と1万を差し出した。

「えっ?えっ?からの~?」

金欠の時のショウキはしつこく面倒くさい。トモヤは仕方なくもう1万渡した。

「ああ無理やで!もう一声頼むわぁ!」

と3本の指を出した。

「なにその3本? 返してな、ホンマに」

「今度な、大きな売買があって、絶対返せるさかい!」

「分かったわ。ホンマに返してや」

スロープを上がりながら、合計3万円をショーキに渡した。外に出ると歩道にほってあったゼッペケがない。辺りを見渡すと、181号線の車道の真ん中に転がっていた。

「マジか!」ゼッペケを取りにいったショーキがエンジンをかけようと何度もキックするがかからない。

「どないしたん?」

「なんや、ガス欠か、漏れたんか、エンジンがかからんわ」

「もうええわ、歩いて帰ろ、ほなまたね」

千北の交差点を渡ると東山方面の空が明るくなってきていた。

写真 福持英助 / デザイン 櫻井浩(⑥Design)

 

 

Leave a Reply

Your email address will not be published.