鼻血を撒き散らしながら、後ろに吹っ飛んだサヤマを見てほぼ全員の観客がタバコを捨てて立ちあがった。
「こんなボウズにわれ、負けたら、看板下ろせ、コラァ!」
「おぅ!たいがいにせぇよ、このあんぽらぁー!」
「なにさらしとんねん、お前にナンボ張ってると思うてんのや!」
会場は怒声と罵声が鳴り止まない。今までずっと横の女と話していた男もリングの2人を見た。外の隙間から見ていたコウダイも拳を握りしめ、ガッツポーズになっている。奥の方でショーキが膝を付いたまま座っているのが見えた。
血を見てキレたサヤマが立ち上がり、ふたたびファイティングポーズになって、トモヤに向かって叫んできた。
「このガキがぁ!なめとんのか!かかってこいや!」
前蹴りとミドルキックとローキックでガードの上から攻めるが倒れないトモヤに段々とイラついて大振りになってきていた。
…コイツ、技そんなないな、ミドルキックつかんで転がしたろ….そう閃いた瞬間、右ミドルがきた。トモヤは身体を左にかわしサヤマに突っ込んでいった。
「ヨッシャ!シトめたれ!」
コウダイが思わず叫んだ。サヤマとトモヤが一瞬空中に浮かび、そのまま一緒に地面に転がり込んだ。下になったサヤマはグォン!と音がして後頭部を地面のコンクリートに打ちつけた。手を伸ばしたまま動かなくなったのが転がりながら見えた。
「あほんだら!こんボケがぁー!立ち上がんかい!」
「ええ加減にせぇよ!この、あんぽらがぁ!」
すぐに立ち上がり、すかさずサヤマの頭を何度も踏みつけながら、トモヤも興奮して声を荒げた。
「勝たな!殺されるんや!」
写真 福持英助 / デザイン 櫻井浩(⑥Design)
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