「あんぽら」 第1章 地下地下の賭け喧嘩 デビュー編 

「あんぽら」 第1章 地下地下の賭け喧嘩 デビュー編

4話 今日やってん!今日!

 

「トモヤぁー!、トモヤぁぁー!頼む!降りてきてくれぇ!」

夜中の2時頃、原チャリのエンジン音と聞き覚えのある声がした。…いつもの合図(指笛)と違うやん..と寝ぼけながら思い、トモヤは2階の部屋の窓を開けた。

「なんや、どーしたん、ショーちゃん?」

「おぅ、トモヤ!じつはな今日やってん!今日!あの日やあの日!あっ~、もう!下手打ちや!クニヨシくん、俺の耳ちぎる言うてんねん!」

「えっ、ほんまなん? わかった、ちょー、待ってや」

ゼッペケに跨りながらトモヤを見上げるショーキは、ガラケーを持ってキョドっている。…耳ちぎられるってなんやねん…いつものカナイの黒のジャージにスカジャンを羽織って降りていった。

「おうっ、後ろに乗れ!」

身長175cm体重70kgのトモヤが乗ると、リアサスがグンと沈み折り曲げたナンバーと後輪タイヤがぶつかった。2人ともノーヘルでショーキは前のめりになりアクセルを全開にした。…ヤバぃ、ヤバぃ、殺されるわぁ….と、ブツブツとつぶやいている。左手に握られた携帯電話の着信音からナンジャマンが鳴っている。

「行きたきゃ行け、いたけりゃいろ、そんなの自分で勝手に決めろ~♪」

…ショーちゃん、あの娘とうまくいってんねや…トモヤは後ろで揺られながら漠然と考えていた。

14号棟までノンストップで5分で着いた。地下に降りていくスロープにはベンツやジャガー、センチュリーなどの高級車がギリギリに止めてあり中に入れない。道路のフェンスにゼッペケを倒しかけて、ショーキは壁と車のほんの少しの合間を身体を横にしてすり抜けていく。

…なんやこれ、こんなんはじめてやわ…トモヤも後に続いた。下に降りると車のヘッドライトに照らされた会場が見えた。パイプ椅子が円座に置かれ、遠目から見てもヤクザな風貌な人達が座っている。若い衆を立たせ、ふんぞり返って貧乏ゆすりをしている人、携帯電話を片手に怒鳴っている人、横に座らせたギャルの太ももを触ってイチャついてる人、柱に貼ってある張り紙を睨んでいる人。全員がタバコを吸っていて、ライトに照らされた煙が揺らめいて、全体にわたって靄がかかっている。柱の方でクニヨシくんが膝をついてストライプ柄のスーツを着たオジキらしい人に何やら言っていた。

「もう少しお待ちください、いま迎えに行ってます、絶対楽しんでもらえますんで、すいません」

地下駐車場は181号線沿いに入り口があり、普通車が15台くらい止められる。在所の者からは地下地下と呼ばれ、住民が何度もライトを取り付けても割られてしまうため昼間でも暗い。そのためか拐われた女性がレイプされたり、暴走族が溜まっていたり、盗品が放置されている場所となっていて地元の人間も近寄らない場所だった。奥にはいつも什器のゴミが積まれた2トンのダンプカーが止めてあった。

地下のダンプカー

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