元詐欺Gメンバー「詐欺に騙されないために”できること・やってほしいこと”」(4)
一度でも信じれば悪夢の始まり
約3億5千万円。これは私がいたタイの箱(アジト。約15人)が2ヶ月半(1月15日~3月29日)で騙し取った金額です。
前回書いたように(※前記事リンク)、私がやっていた手口は1回で終わらず2回、3回と続く。1度でも信じれば悪夢の始まりです。
少し複雑になりますが、紹介していきましょう。
1回目は95%が返金できるとして30万円を払わせました。2回目はこの返金手続きとして公的機関を名乗り、電話をかけます。
この時
・他に2社の未納が見つかった。
・1社目と同様の被害である可能性が高いので調査を依頼したところ、やはり悪用被害の可能性が高いとのことなので引き続き調査をしてもらっている。
・この2社の料金も返金できる。
等として50万円を請求する。
さすがに1回は騙された人でも、30万円に続いて50万円の請求となると不信感を抱く。だからこそ1回目のウイルス、ハッキングの下りが重要になってくる。見えない何かに不安を感じ、誰かにすがりたい所に「調査・返金」という解決策を提示し、信用させる。
1回目騙された人のうち、約50%が2回目も騙されます。確率は高くないが、ここで信じた人は〝刺さった〟証拠。以降はほぼ言いなりです。
続いて3回目、返金日が確定したとして連絡。ここで次の「ネタ」を仕込むための布石として、サイバー保険の加入を勧める。
・調査の中間報告がきて「ハッキングの被害の可能性が高い」とのことだった。
・次の被害がいつ起きてもおかしくない状態だ。
・強制ではないがサイバー保険の加入をオススメする。
・この保険も返金が可能なので一時加入でも大丈夫。
などとして「今後何かあるかもしれない」と思わせておく。
プランは50万~1千万等、適当に設定。約30%が加入します。(額は人によるが100~200万円程度。まれに500~1千万円近く払う人も)
そして4回目。調査の結果が出たとして、調査機関の担当を名乗り電話。
・やはりハッキングの被害にあっていた。
・ハッキング犯が●●様(被害者)の端末(こっちからはスマホともPCとも言わない)を経由し、世界中にランサムウェアという(実際にある強力な)ネットウイルスをばら撒いている。
・既に多くの被害が出ており、警察の捜査が進めば●●様が逮捕されてしまう。
・対策として緊急の調査を進め、●●様が犯人ではないと証明するための証明書の作成費と調査費が必要。
・第三者にこの話をすると、この証明書の効力が無くなるので守秘義務を必ず守ること。
等として50万円を請求。約80%が払います。(残りの20%も、大半が信じているが払うお金がない、という人)
ここで前回のサイバー保険が効いてくる。加入していなかった人は「入っていれば」となるし、加入していた人には請求内容を変える。
・既に被害が出ており、賠償金を払わなければ逮捕される。
・今の保険のプランでは対応できる金額を超えているのでプランの変更をしなければ。
等々。ここまでくると「逮捕されるかも」という(嘘の)事実と守秘義務が刺さり、操り人形状態。払えと言えば払い、借金しろと言えば借金する。後は何とでも言って騙せます。「犯人が見つからない」「被害が増えた」「海外で被害が出て保険が効かない」等と言い、全てを奪う。相談すべき人にも〝守秘義務〟があるので、頼れるのは〝調査機関の担当〟だけ。
また、これまで払った分の返金も「この件が解決するまで返金できない」「賠償金の足りない分に当てる」等として先延ばしにする。まさに悪夢が続くのです。
こうして信じ続け、詐欺だと気づいた時、どんな気持ちになるのでしょうか。
騙される人の10%くらいが、合計500万円以上の大金を払っていました。中には4千万円以上払っていた人もいて、この方はご両親の遺産を全て失いました。
「失いました」は不適切ですね。私たちが「奪った」というのが正しい。
どれだけ考えても、私は被害者の気持ちを想像することしかできません。それでも、2ヶ月半で奪った〝3億5千万円〟というお金の数だけ、人の未来を奪ったということは理解しているつもりです。
だからこそ伝えたいのが〝第三者の重要性〟です。
ここまで説明してきたのは架空請求の手口ですが、オレオレ詐欺などの他の手口にも共通しているのは…
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