「あんぽら」 第1章 地下地下の賭け喧嘩 デビュー編
5話 全日本空手選手権2位のサヤマくん
リングの中に連れてこられると身長185cm位の刈り上げで短髪の色黒、吊り上がった眼をした兄ちゃんがアップしていた。拳にバンデージをして、シャイァー!という掛け声で踵落としを連発し、胸元のジャージに刺繍で空手道と書いてある。
…なんや、俺コイツとやるん? えっ、素手かえ、まあええわ…
トモヤは自分の拳を見た。リングは15席位で円座になっており、オジキやらアニキやら強面のオッちゃん達とキャバクラ嬢が座っている。クニヨシくんが空手の兄ちゃんに目で合図をして、3人は中央に並んだ。
…ヤクザしかおらんやん!ショーちゃん、俺のことハメたな、生贄やんけ!…
舎弟らしい若いスーツの男2人が観客に膝をついて話している。奥の方から鋭い視線を感じると、車の中から坊主のガタイのデカい男が睨んでいる。
…なんか見たことあるなぁ、なんやねんな、マジで…、賭けられとんのか、俺?…
「ぇ~、皆さん、今日は来ていただきありがとうございます。あの~、紹介をいたします。ぇ~と、まず、大学空手全日本2位サヤマくん、拍手~」 クニヨシくんが挨拶を始めた。パチパチパチ… 前のめりで座っていた角刈りのオッちゃんが怠そうに手を叩いた。
「ぇ~っと、この子、お前、名前なんやったっけ?」
「トモヤです、」
「年は?」
「中学2年です。」
「お前ぇ、嘉楽やったっけ?」
「はい」
「ぇ~、嘉楽中2年、ぇ~、トモヤ、拍手~」
またもパチパチと数人が拍手をすると、ずっと携帯で電話していた男が突然声を張り上げた。
「おいっ!クニヨシ!お前こんなん、賭けになるんか? おぅ!」
「いや、心配なさらないでください、そこに貼ってある配当を見ていただけるとわかる通り~」
クニヨシくんが柱の張り紙を指すと、スーツの若い衆がすぐさま男の元に駆け寄り何やらと話しはじめた。
「おっ~、そうかぁ~、クソガキ!ワレ負けたら殺すど!」
「ぇ~、それでは、皆さん、楽しんでいって下さい」
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