【なぜ?】現地住民が不満 牛丼「すき家」が運営する
チキンライスショップに「偽物」の声【マレーシア発】
「偽物」というより「別物」か
牛丼の「すき家」など多数の外食チェーンを展開するゼンショーホールディングスは先ごろ、マレーシアの飲食チェーン「ザ・チキン・ライス・ショップ(TCRS)」を買収した。すでに「すき家」はマレーシアでも都心部のショッピングモールなどに入っており人気だ。
TCRSはミャンマーやブルネイなどにも展開し、今日現在109店舗に広げている大手チェーンだ。看板メニューはその名のとおり「チキンライス」で、鶏肉の出汁で炊いたご飯に、甘辛く味付けした蒸し鶏やローストチキンなどを添える料理のこと。日本の炊き込みご飯より薄く優しい味で、派手さはないが癖になる奥深さ。添えるチキンと併せて食べる。だがTCRSのチキンライスは、ときに一部のマレーシア国民からは「ニセモノ」と呼ばれることもある。それはTCRSがムスリム対象の「ハラル認証」の店だからだ。要するに、酒類や豚肉料理は置いていないのである。
一皿10リンギ(約260円)程度で食べられるチキンライス(ランチタイムなら飲み物付きで8リンギ=約208円)ほか、麺類や魚料理など格安なファミレスといった風だが、客のほとんどがイスラム教徒。そうなると本来、中華料理の部類であるチキンライスを「私たちの料理」とする中華系はTCRSには行かず、街中に無数にある個人店に行く。
「私たちはTCRSには行かない」とハッキリ言うのはグルメブログもやっている中華系の30代女性。
「前に一度、TCRSに行って食べたら味がニセモノだと思いました。料理酒を使っていないので味に深みがないんです。私には物足りないです」
TCRSのチキンライスを食べても美味しく感じるが、教えられた名店と比較すれば、伝統の味を受け継いできた中華系に軍配が上がる。ゼンショーがこれを「本場チキンライスだ」と日本に輸入させるなら一言挟みたいところだが、同社はTCRSを日本展開する予定はないという。「世界に20億人いるムスリム市場は将来的にも拡大傾向なので、そのノウハウを構築する狙いがあるんでしょう」とはマレーシアの飲食業者。
かなりの親日国で知られるマレーシアは日本旅行が大ブームだが、ムスリムたちが東京や大阪に行ってもハラル認証の店がほとんどないため、外食の収益を逃しているところはある。その意味でもノウハウを持つのは重要な戦略だろう。TCRSがたとえ偽チキンライスと呼ばれても、ビジネス的には攻めの一手と見ることができる。(片岡亮/NEWESIDER)
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