「甘い囁き」には裏がある
ただ、彼等は新宿ではヤクザを滅茶苦茶立てていた。良くしてもらったことも沢山あるのだろう。俺のつるんでいたナイジェリア人もヤクザには歯向かったりしなかったけど、薬が好きで大変だった。夜中になると、こう電話がかかってくる。
「Sが欲しい。誰か紹介してくれ」
ってね。いつもハイで、身体も痩せこけていたよ。
奴等の仲間は六本木にも沢山いた。六本木では、仕事にあぶれることはないからね。黒いスーツやお洒落なアルマーニを着てストリートに立っていた。ルーマニア人が在籍するストリップバーでも黒服をやっていた。
彼等はヤクザよりも、「ナイジェリアの黒人が六本木で働く道を切り開いた」と言われていた朝堂院大覚のことを”パパ”とか”総裁”なんて呼んでいるのを何度か見かけたことがある。物凄い立てている感じでね。六本木と新宿では外国人のルーツが全然違うからね。
六本木のナイジェリア人もドラッグを扱っていた。ドラッグ位お手の物で、高級車を乗り回したり、随分派手な者も中にはいたんだ。派手な連中に限って、日本のヤクザや大物や犯罪者と上手く付き合い、立ち回っていた。
さっき話したヤク中の友達も、いつも日本人の女を連れて、ポケットには札束を忍ばせていた。そいつがよく言っていたのが、こんなセリフだよ。
「日本人の女はステータスに弱い。ヒップホップが流行れば、俺たち黒人と寝たがる。金なんか使わないよ。全部彼女達が面倒見てくれるんだ」
他にこんなことも言っていた。
「若い女だけじゃない。歳のいった女も、助けて欲しいとか、ベイビー、とか囁いていれば金を持ってくる」
その時は、随分と自意識過剰のバカな奴だな、位に思っていたが、国際ロマンスの詐欺事件を見ていると、あながち間違ってないんじゃないかと思ってしまう。日本人女性の性質や国民性をよく分析した犯行なのだろう。
女子は出会いから、結ばれるまでの工程をロマンチックに大切にするって言う。甘くささやかれて、マメにメールが来て、花束の写真なんかが嬉しいんだろうな。男なんて出会ってからやるまでの工程なんかどうだっていいから、全然違うんだ。
ちなみにその友達のナイジェリア人はその後シャブでパクられて、服役した後に国に帰ったと風の便りで聞いたよ。甘い囁きの裏にはこんな現実がある。それは知っておいたほうがいいんじゃないかな。
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