【独自】関東連合元メンバー逮捕「原野商法」がめくれたわけ

【独自】関東連合元メンバー逮捕
「原野商法」がめくれたわけ(安藤海南男)

安藤海南男
あんどう・かなお。ジャーナリスト。元新聞記者。大手新聞社に入社後、地方支局での勤務を経て、警視庁担当の事件記者として活躍。退社後も警察組織の裏側を精力的に取材する

ガサで偶然みつかった「被害者リスト」

「組対4課が原野商法をやるらしい」ーー。
11月上旬、暴力団界隈やメディア関係者で、こんな噂が出回った。資産価値の低い土地を高値で売りつける「原野商法」は、1970〜80年代に被害が続発した詐欺商法のひとつ。暴力団事件を扱う警視庁組織犯罪対策4課が、この詐欺を仕掛けた男たち13人を摘発したのは、それから1カ月ほどが経った11月28日のことだった。
ありもしないリゾート開発計画を持ち出すなどして、二束三文の山林を売りつけるというのが典型的な手口で、高度成長期の日本で隆盛をきわめた不動産詐欺である。
今回、詐欺グループに狙われたのは、かつて原野商法の被害にあった人たち。
だまされた土地所有者が、売るに売れずに塩漬けになった土地を「高値で買い取る」と勧誘され、「整地料」「手数料」などの名目でさらに金をだまし取られるという”二次被害”に遭っていた。
「昭和」を感じさせるどこか古めかしい響きを持つこの詐欺事件は、テレビや新聞が大きく取り上げ、世間の耳目を集めたが、犯罪を飯の種にするヤクザや半グレら「不良」の界隈では意外な反応が上がったという。
「ニュースで事件のことを知った時は、『今さら感』が半端なかった」
苦笑いを浮かべながらこう話すのは、関東を拠点とする某組織と縁深い男だ。
飲食店オーナーの肩書きを持つが、日々の糧のほとんどは、振り込め詐欺や金の密輸などの”裏稼業”で得ている。男は事件の内幕をこう明かした。
「原野商法の被害者を狙う手口が流行ったのは5年前くらいの話だよ。被害者のリストが出回って、関東周辺の不良連中に一気に広まった。ありもしない話をでっち上げて金をだまし取るわけだから、詐欺には違いないんだけど、騙す相手と契約書を交わすから事件になりにくい。OS(オレオレ詐欺)なんかよりパクられるリスクが低いからみんなこぞってやってたよ」
実際、3〜4年前から警視庁のみならず関東周辺の警察には被害相談が多く寄せられていたとされるが、「一向に事件化する気配はなかった」(一般紙社会部記者)という。
では、なぜ今回、警視庁は逮捕にこぎ着けたのか。「振り込め詐欺の捜査の延長だったからですよ」と声を潜めるのは、事情を知る捜査関係者だ。
「事件捜査で詐欺グループのアジトに踏み込んだ際、証拠品として押収した資料の中に、今回の原野商法の被害者リストが混じっていた。詐欺グループは関東の某組織と関係が深く、準暴力団の『関東連合』との接点も浮上した。それで組対4課も、『これは事件にできるんじゃないか』と重い腰を上げたというわけです」
関係者によると、組対4課は1年以上の内偵捜査の末に摘発までこぎ着けたという。
前出の男は言う。
「今回パクられた連中は、ちょっとやり方が強引だった。そもそも、『振り込め』やってるアジトにリストを置いておくなんてユル過ぎる。欲をかきすぎて足元をすくわれたって感じだね」
報じられた事件は氷山の一角。捜査の網をすり抜けた連中は、今も新たな獲物探しに目をぎらつかせている。

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