元詐欺Gメンバー「詐欺に騙されないために“できること・やってほしいこと”」(1)

なぜ詐欺を行ってしまったのか

誌面でも軽く触れましたが、私は幼少期、母親に虐待されていた事や、両親の離婚後の貧しい環境で育った事、病気に苦しみ、好きな事もほとんどできずに死んでいった父に対し、何もできなかった「己の無力さ」を痛感した経験から「自分の大切な人を守れる力が欲しい」「自分と同じような環境で育った若者に何か与えられるような人間になりたい」「病気に苦しむ人や片親家庭の人を支援したい」と思っていました。
しかし、「自分がもっとしっかりしていれば父に迷惑をかけず、父はもっと長生きできたのではないか?」「自分にお金があれば父を助けられたのではないか?」「自分がもっと強ければ大切な物を失わずに済んだのではないか?」という思いが「金さえあれば苦しまない」「金さえあれば大切な人を守れる」という極端な考え方になり、お金に対する強い思いが根底にありました。

そういった思いから「人のためになる仕事をしたい」と考え、自分なりに事業を起こしたりしたものの、努力を怠ったり自分の欲に負けたりと上手くいかず失敗し、借金を抱え友人や知人に助けられていました。
中には自分の身を切ってまで助けてくれる人もいたのに、その頃はお金や自分の欲ばかりを考えてしまい「自分が本当に大切にすべき物」を見失ってしまい、ただお金のために朝から晩まで働き、身も心も疲弊していました。
それでも返済が間に合わず、困っている時に出会い、助けてくれたのが詐欺組織のリクルーターでした。
いま思えば最初から私に詐欺をさせるため、断れないようにするために、身の回りの事まで世話をしてくれていたのだと分かりますが、この時は「藁をもつかむ思い」だった私の弱さを甘さにつけ込まれ、まんまと利用されてしまいました。
詐欺の話をされた際、それに気付きましたが、この時はすでに断られる状況ではなく、私は詐欺を行う事を決断しました。

誤解の無いように書いておきますが、幼少期の経験を書き同情を引こうとしているわけではないですし、「やらされていただけだから自分は悪くない」と言いたいわけではありません。根本的な原因は自分の甘えと弱さです。
どのような人間でが、どのような経験で詐欺をする事になったのかを詳しく書くことで、私と同じようにつけ込まれ、利用されてしまう若者を減らすことができると思い、幼少期の経験とリクルーターに勧誘された経験は強調して書かせて頂きましたが、つけ込まれる状況を作り断れなかったのは自分の責任だと今では深く反省しています。

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