【闇シリーズ】ニッポン最後の怪人・康芳夫の「暗黒老人日記」

profile

康芳夫(こう・よしお)
1937年東京生まれ。《虚業家》を自称し、1970年代〜1980年代にかけて「謎の類人猿オリバーくん」「国際ネッシー探検隊」「モハメド・アリ招聘」等々奇想天外な企画を連発した《国際暗黒プロデューサー》。
『家畜人ヤプー』の全権代理人としても知られ、現在は80代を超えて俳優業に進出。映画『渇き。』『ディアスポリス』『干支天使チアラット』等で怪優として存在感を発揮している。
・公式ツイッター=@kyojinkouyoshio
・公式サイト=http://yapou.club
・有料メルマガ『全地球を睥睨(へいげい)するスフィンクス『康芳夫』メールマガジンそして「家畜人ヤプー」通信
・無料メルマガ『虚実皮膜の狭間=ネットの世界で「康芳夫」ノールール(Free!)

【闇シリーズ】ニッポン最後の怪人 康芳夫の「暗黒老人日記」 第一回 麻原彰晃が来た(その1)

私の事務所には殺人者が集まっていた

1982年×月×日
その男のことは、本当に印象に残っていない。恐らく、片目(左目)は見えてない状態だった。
身なりは至って普通で、ヒッピーのような服装。まだ痩せてて、髪の毛は長かった。
私が出版した“20世紀最大の奇書”『家畜人ヤプー』にも彼は興味を示していたようだ。
私に「『ヤプー』の作者に会わせてもらえないか?」って頼んできたり、当時は出版社に遊びに来てる熱心な読者のひとりという様子だった。
その他に覚えていることといえば、彼が「インドに修行に行きます」って言っていたことと、薬事法違反で捕まったと語っていたことだ。
「オウム神仙の会」という、「オウム真理教」の前身の団体をやっていた頃だと記憶している。
あの頃、私の出版社にはいろんな若者が出入りしていて、彼はその中の一人という感じだった。
出版社をやっていた時、私のところには三島由起夫の首を撥ねた森田必勝も出入りしていたし、「ロス疑惑」の三浦和義も来ていた。
つまり、殺人者はみんな私の元に集まっていたことになる。麻原も編集室に「失礼します」と入ってきては、飯を食ったり酒を飲んだりしていたものだ。
毎日夜遅くまで皆で話をして……私は宗教に関しては今でも深い関心を持ってるが、その頃は「宗教的信念に基いているなら、なんでもやるべきだ」などと言っていた覚えがある。
まさか、それを鵜呑みにして麻原があの事件を起こしたとは考えてはいないが……まぁ、当時は私が《教祖》みたいなものだったのだ。
今ではあまり知られていないことであるが、1968年頃から1980年代にかけて、私は出版プロデューサーをやっていた。
“赤い呼び屋”と呼ばれた神彰との“呼び屋稼業”で、我々が莫大な借金を作った後の話だ。1966年、まだ日本のモータースポーツが確立されてもいない時代に、我々は「インディ500」を招聘し、ジャッキー・スチュアート、ジム・クラークなど、当時の世界的一流レーサーを全て揃えて、10億は儲けるつもりだったが、蓋を開けてみれば結果はその逆。
我々は、今の金にして10億円近い負債を負ってしまった。
その後、“起死回生”としてあの《モダン・ジャズの伝説》、マイルス・デイビスの招聘を企画したが、なんと入国直前で法務省がデイビスの入国を認めないとして、公演はキャンセルに。
デイビスの過去の麻薬使用での逮捕歴を咎めてのことだった。
ここで万策尽きた神は呼び屋から足を洗い、その後、二度と戻ってはこなかった。
私はひとまず、自らの興味をかき立てる“暇潰し”を探し、それほど元手を必用としない出版業に身を移すことにした。
まずは神さんとのアートライフ時代に作っていた「天声出版」から、かの澁澤龍彦を責任編集にした伝説のエログロカルチャー誌『血と薔薇』を創刊。
この時に集ったメンバーは三島由紀夫、埴谷雄高、吉行淳之介、種村季弘等々、まさに錚々たる面々だったのだ。
そんな《暗黒のカルチャー》に魅せられてやってきたのが、麻原彰晃青年というわけだ。
ーーーー

profile

●康芳夫(こう・よしお)
1937年東京生まれ。《虚業家》を自称し、1970年代〜1980年代にかけて「謎の類人猿オリバーくん」「国際ネッシー探検隊」「モハメド・アリ招聘」等々奇想天外な企画を連発した《国際暗黒プロデューサー》。
『家畜人ヤプー』の全権代理人としても知られ、現在は80代を超えて俳優業に進出。
映画『渇き。』『ディアスポリス』『干支天使チアラット』等で怪優として存在感を発揮している。
・公式ツイッター=@kyojinkouyoshio
・公式サイト=http://yapou.club
・有料メルマガ『全地球を睥睨(へいげい)するスフィンクス『康芳夫』メールマガジンそして「家畜人ヤプー」通信
・無料メルマガ『虚実皮膜の狭間=ネットの世界で「康芳夫」ノールール(Free!)

Leave a Reply

Your email address will not be published.