平日は雑用、土日は“トレーニング”
「(グループに入って)3ヶ月ですね。おな小(おなじ小学校)だった、いま中2の先輩に誘われたんです。無理やりやらされたんじゃないです。カネ、めっちゃ欲しかったんで、OKしました」
ある裏組織の構成員に紹介してもらったX君(12歳)は、ハキハキと答えた。ぱっと見は中学2、3年生。言葉遣いも大人びている。服装はいかにもませた不良少年といった雰囲気だが、ときおり見せるあどけない笑顔は、やっぱり「児童」でしかない。
「(西東京某地区の)区立××小学校、かなり悪い学校で有名です。親や兄弟がヤクザとか半グレの人も多いですね」
X君の属する詐欺グループは、都内某所のマンションの一室を拠点に、社債絡みの投資ネタを餌にした”振り込め詐欺”を行っている。ただ、”振り込め”とはいっても、実際の集金はもっぱら”直で取りに行く”のが最近のやり方だ。暴力団につながる中堅の投資詐欺集団から派生した末端の新進グループである。
リーダーは18歳の元暴走族の少年。グループの人数は、指導役の幹部が2人、電話役の「掛け子」、カネを受け取りに行く「出し子」、それに「見張り役」などを合わせて15名ほどだという。掛け子は20代中心で、受け子と見張りは10代の少年が担っている。
「Y君(前述のリーダー)から、友だちをどんどん勧誘してこいっていわれてます。1人グループに入れれば2万円もらえるので頑張ってスカウトしたいんですけど、バカ入れちゃうと、あとで自分が責任取らされるんで、そんなに簡単じゃないですよね」
その口からは小6とは到底思えない言葉が次々に出て来た。
「べつに悪いことじゃない」
まとめ
先輩から誘われて金のために犯罪に手を染め、そのことに何の悪気もないX君。金がすべてという”常識”は、こんなモンスターをこれからも生み出していく世の中をつくっていくのだろうか。(伴音康記)