天下のジブリでさえ…アニメ業界はブラック企業ばかりの噂

画像はジブリHPキャプチャ

人気作品を次々と生み出すジブリでもそうなのか……(画像は公式HPより)

アニメ業界では、平均年収111.3万円という職種も

“クールジャパン”の立役者たちは、なぜ報われない?

先日、スタジオジブリ代表取締役の鈴木敏夫プロデューサーのインタビュー記事がネットで公開され、ジブリはブラック企業なのかという論争が巻き起こった。
『火垂るの墓』や『かぐや姫の物語』などの大ヒットアニメ映画を手がけ、今年4月に逝去した高畑勲監督(享年82歳)のやり方に関し、鈴木プロデューサーは「まわりの人間を尊重するということがない」「スタッフがみんなボロボロになる」と激白。
ジブリほどの国民的名作を生み出すためには、多少の犠牲はいとわぬ姿勢が必要とも考えられそうだが、その資本はスタッフの身体であり、替えなど利かないということを決して忘れてはならないだろう。それはジブリに限った話ではなく、日本のアニメ業界では、過酷な労働環境や薄給がたびたび問題視されているのだ。
一例を挙げると、東京都のアニメ制作会社・A-1 Picturesで制作進行を務めていた男性は、うつ病を発症して2010年に過労自殺(享年28歳)。この男性が通院していた医療施設のカルテには、「月600時間労働」という信じがたい記述が残されており、残業代も支払われていなかったそうである。
また、『NARUTO -ナルト-』や『BLEACH』といった人気作品の演出を担当していた水野和則氏は、2017年に急逝(享年51歳)。スタジオ作業中に「1時間だけ仮眠を取る」と言い残し、そのまま帰らぬ人となってしまったようで、これまた過労死ではないかとの疑惑が…。
どれだけ仕事がハードでも、それに見合っただけの報酬があればまだ救われるのだろうが、アニメ業界ではそうも言っていられないらしい。
日本アニメーター・演出協会が公開している「アニメーション制作者実態調査2015」によれば、アニメ業界の平均年収は332.8万円とのこと。想像より高いと感じる人もいるかもしれないが、実際は職種によってムラがあり、原画と原画の間を埋める絵を描く「動画」(=中割り)担当者の平均年収は、わずか111.3万円まで下がってしまう。
さらに、アニメ業界ではフリーランスが全体の37.7%で、正社員はたったの15.5%。フリーランスとはつまり、最低賃金が保証されていないため、単価が約200円に過ぎないイラストを来る日も来る日も量産することでようやく、先述したような年収に届くというわけだ。
こうした現状を改善できなければ、アニメ業界に足を踏み入れる者は少なくなり、現職のスタッフたちへの負担は重くなる一方だろう。負のスパイラルから抜け出すための暗中模索は、当分続きそうである。

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