覆面お笑い評論家・不治多ニゴルの 「毒毒芸人1000本斬り」

覆面お笑い評論家・不治多ニゴルの「毒毒芸人1000本斬り」 その1・ダウンタウンの『水曜日のダウンタウン』

ボケてないなあ

ネタ不足の編集部より連絡、いまや大不作まっただ中の「地上波バラエティについて評論しろ」という時代錯誤な依頼を受けて始まったこの企画。
初回から毒づいてばかりでも景気が悪いので、無理矢理にでもポジティブに語れるようにとするならば、それは『水曜日のダウンタウン』(TBS/以下『水ダウ』)以外にはあり得ないだろう。
全国ネット、東京ローカルならばなおさらである。それくらいに、今、お笑い好きが観るべき番組は少ない。
そんな地上波の“ラストホープ”ともいえる『水ダウ』であるが、番組のスタイルとしては、プレゼンターの芸人がスタジオに様々な「説」を持ち込み、その検証ビデオをパネラー陣のタレントたちと共に観るというスタイル。
これは、番組スタッフが自発的に考えている「説」と視聴者からの「依頼」という形が違うだけで、内容的にはほぼ『探偵ナイトスクープ』の形式を踏襲しているものである。
両者の大きな違いとしては、『ナイトスクープ』「依頼」が、《良心的で家族的》なものに寄りがちなことに対し、『水ダウ』「説」は、制作者の目論む《悪意のサイド》に寄りがちなところである。
そんな悪意に満ちた説は『勝俣州和ファン0人説』や、芸人の気持ち悪い人間性を前面に押し出した『クロちゃんシリーズ』、さらには“ミスターサスケ”等のポンコツ素人のイジり方に顕著だが、それはプロデューサーの藤井健太郎が『クイズ☆タレント名鑑』時代から放ち続けているダークな芸風と言い換えることができるだろう。
そのコンプライアンスを公然と無視し続ける番組のスタイルもあり、一般的な知名度的には、《なにかと問題のある番組》といったものだろう。
過去に問題があった企画としては当該メーカーからクレームが入った「ブックオフの福袋買うヤツどうかしてる説」、水戸駅前のヤンキーをフィーチャーし水戸市からクレームの入った「水戸なら今でも印籠の効果あるんじゃないか説」等、たびたび番組のエンディングで謝罪文を出す不祥事となっている。
その最新版が芸人を強制連行して始める「ジョジョの鉄塔システム生活第2弾」であり、2018年6月20日放送の予告を出していたものの、そのロケ中に芸人のナダルを強制連行しているところが警察に通報され、警視庁からの厳重注意に繋がり、無事お蔵入りとなった。
最新の7月25日放送の「国道1号線に落ちているポイ捨てタバコのフィルターを拾いながら歩いてたら名古屋くらいでそばがら的なマクラ完成する説」でも、小田原でオープンカーに乗る素人のヤカラから火の付いたタバコを投げ棄てられるシーンをそのまま放送し、プチ炎上している。
このように、通常ならカットするシーンばかりを放送するのが『水ダウ』の真骨頂で、過去にもゴミ屋敷の住人に三四郎の小宮が殴られたシーンや、ホームレス同然の仙人的な素人に鎌を持って追っかけられる三四郎の小宮など、完全にイカレたシーンをそのまま放送してきている。
なぜこんなクレイジーな素材が放送可能なのか、それは、スタジオのダウンタウンの危機回避能力に拠るところだ。つまり、VTRが暴力的なボケであり、ダウンタウンがそれを緩衝するツッコミ。彼らがツッコむことによって初めて「これは笑っていい映像なんだ」と視聴者を安心させているのである。
つまり、『水曜日のダウンタウン』は、ダウンタウンと製作スタッフによる、《コンプライアンス無視の過激な漫才》といえるのだ。
そしてそれは、あのダウンタウンが既にボケられなくなっているという時代の哀しい終焉を象徴する現象でもあるのだ。

Leave a Reply

Your email address will not be published.